前回からの続きです。
蚊取り線香を眼の前に置いて、しばらく眺めていると、色々なことが見えてきます。
ひとつの円形文様に、精神世界が見える・・・
仙や白隠等の禅僧が描いた円相えんそうの世界と重なってみえる事があります。抽象が具象になった瞬間です。
禅における究極の書画のひとつで、図形の丸(まるい形)を一筆で描いたものです。
シンプルな形象の中に、悟り、真理、生死、円満、無などを表現していると言われています。
ただし、多くの禅僧が挑戦してきた円相のほとんどは意味不明で、いやらしいものさえあります。怖いことです。
修業が足りないのか、表現力が未熟なのか、それとも見る側が観えていないのか。
俗物の円相よりも、「はい良くできました、マル!」の円のほうが、書いた方も受け取った方も無邪気に嬉しい分だけマシということも言えます。
「円相」や「採点のマル」の巻き方は、圧倒的に時計回りが多いようです。
右利きの人が多いことと、毛筆などの筆記具の都合もあるでしょう。
写真の蚊取り線香は、金鳥キンチョウの製品で、巻き方が逆です(中心部が起点で先端部がハネとして)。
少数派の巻き方なので、見た時に違和感を覚えるかもしれません。
(フマキラーやアース製品は、逆の巻き方です。ライバル競争会社だから?何か特許か意匠に絡む背景があるのかなぁ。ペット用蚊取り線香「ペティオ(ヤマヒサ製品)」はキンチョウと同じ巻き方でした。)
渦巻きを右回りに描く。左回りに描く。そして外側から描く。内側から描く・・・
心理学や性格判断を引っ張り出す研究者もいますが、私はその日その時の気分で変えています。私のような者は、カウンセリング不可になるのでしょうか。
参考画像:出光コレクション 禅僧仙 一円相画賛